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弟が死んだ話1

家族の話

ついに40歳になってしまった。四十路だ。初老だ。
こないだ亡くなった女性コラムニストさんが40になるというブログを書いていて、共感しかなかった。そして彼女は40になる前に亡くなってしまったのだ。なんとうらやましい。


2年前に、弟が死んだ。35歳だった。
3人の子供を残して。3人目の子供がまだ生後間もない頃に、大腸に癌がみつかった。肝臓に転移していて、ステージ4だった。すぐに手術をしたものの、細かく散らばった癌は取り切れなかったそうだ。結局、抗がん剤治療を行うことになった。

弟はスポーツマンで、背は高くないがとても精悍な体つきをしていた。抗がん剤にも病気にも負けないと思っていた。そんな彼だったけど、わずか数か月でまともに立てないほどガリガリにやせ細った。
その後の話は追い追い書こう。
端的に言うが、母が健康食品やらエセ祈祷師などの「人の不幸でお金を引っ張ろうとする輩」に付きまとわれ、弟を悩ませた。父は元から宗教にのめりこみやすい人だったが、お得意のオカルトは弟には何の効果もなかった。奥さんは生後間もない子供とまだまだ手がかかる上2人の世話に追われていて、弟をケアできる状況にはなかった。姉の私は飛行機の距離に住んでいるので、なにもできない役立たずだった。
弟の救世主には、誰もなれなかったのだ。


結局弟は、病気が発覚してから半年で亡くなった。
あの日。取り乱した母が泣きながら、「お医者さんが、もう明日までもたんかもしれんって…」と電話をかけてきた。弟は意識が混濁し、危篤状態にあった。
私はすぐに飛行機のチケットを取って、会社に事情を説明して早退し、1時間後には空港にいた。替えのコンタクトレンズはたまたま持っていたが、メガネがなかったので空港で買い、着替えも近くのユニクロで買った。今夜は病院泊になるかもしれないと思いながら飛行機に乗り込んだ。
弟が死ぬなんて、考えられなかった。きっと医者がヤブなんだ。
先週会ったときには少し元気になってきたと笑っていたじゃないか。

飛行機が着陸した。
真っ先に携帯の機内モードを解除すると、会社の経理の婆からおくやみメールが入っていた。イラッとした。まだ死んだわけじゃない。ただ、危篤なだけだ。
でも、その次の通知で力が抜けた。母からのLINEが入っていた。
1時間前に弟が死んだと書かれていた。

その場で叫び出したい気持ちに駆られた。
その場にいる全員に、弟が死んだことを知ってほしかった。